温泉


どこにいってなにをするにも、誰と行くか、誰とするかが一番大事だと常々思っていたけれど、


温泉に限っては、いつ行くかが一番大事かもしれない。
それは季節とか時間帯とかじゃなくて、自分の心の状態というか、タイミングが合うかどうか。

今日は急用で急遽温泉旅館に泊まることになったのだけど、自分の中でのタイミングが合ったせいか、ものすごく気持ちよくて。
寂れた田舎町の寂れた温泉街のオンボロ宿だったけど、草津の100倍良かった。


この気持ちをまた味わいたいから、次の旅行は自分のタイミング見計らって直前に決めるくらいが良いかもしれない。


心が疲れてからっぽなときを逃さないように。

すべて真夜中の恋人たち

またいろいろ忙しくなってきたので自然と読書の時間が増えてきました。

校閲という仕事がどんなものか、原稿から一冊の本が出来上がるまでのプロセスで関わる人たちについて少し知ることができた。
ストーリー全体としてはあまり起伏もなく驚きもなく、つらつらと続いてすっと抜けるように終わっちゃった。

主人公はほとんど喋らないし気弱でまじめでつまらない性格だからあまり好きにはなれなかったな。
その点、出てくる友人はみんな(といっても2人くらい)よく喋る。
渡鬼並みの長台詞で、しかも結構面白くて、魅力的だった。

特に気に入ってるのは、聖のこの台詞

「ある鈍さからくる発言とか考えかたには、ときどきぞっとするほど気持ちが悪くて凶暴なものが潜んていることがあるのよ。わたしはその鈍さにたいしてどうにも我慢できなくなることがあるの。どうしても我慢できない。それにね、その後輩はまだ素直でよかったわよ。根っから素直なのはいいことだわよ。心がなごむもの。それで生きていけるんならそれでいいわよ。でもね、ほんとうに質が悪いのは、そういうことをぜんぶわかっているくせに、保身のために粛々と演技してるやつらなのよ。権力とか名誉とかそういうのがほんとは大好きで大好きで欲しくて欲しくてたまらないくせに、そんなこと考えたこともないって顔して、そういうの、ほんとうのわからないんですって態度で、男の自尊心とか優越感をぜったい脅かさないように用心深く立ち回ってるやつらなのよ。それで、自分だけはぜったいに損しないように注意深く生きてるの。ぼおっと生きてるふりして、そのじつこれ以上はないってくらい目を光らせてね。もちろん自分に似た感じの、自分のポジションをちょっとでも脅かす可能性のある若い女の子なんか入ってきた日には徹底的に潰すわよ。即座にね。そういうのは容赦ないのよ。わたしそんなの厭っていうほどみてきたんだから。でもね、それもいいわよ、生き方だもの。でもわたしが厭なのはね、その自分のちゃちい演技が誰にもばれてないって信じこんでる、そのあまりにもナイーブなところなのよ。女が『女ってこういう感じでいればいいんでしょ』って男を舐めてるつもりで女を舐めてるそういうとこよ。そういうのせんぶひっくるめて『大丈夫、うまくやれてる』って信じきって安心していられるーーーわたしがどうしても許せないのは、そういう鈍さなの」

物語に直接関わってくる話ではないんだけど、すごく印象に残っていて、「スロウハイツの神様」に出てくる環を思い出した。
この感じ、わかるかなあ。
結局、印象に残るのはこういう強くて芯があって、よく見ていてよく気付いてよく喋る人なんだよね。

こんな人、実際はなかなかいないもんねえ。


一方ほとんど台詞のない主人公は心のなかの描写がたくさんあって、いろんなことを考えてはいてもそれをなかなか言葉にできない不器用な女性として描かれていた。

三束さんという男性と少しずつ距離を縮めていく中で、この描写はすごく好きだった。

テーブルのしたで足がぶつかることがあると、ふたりとも競うように謝りあい、それからしばらくのあいだ黙りこむのだった。そんなことは何もかも、もしかしたら他愛のないことかもしれなかったけれど、わたしたちはお互いにお互いを構成するものをすこしずつ交換しながら、わたしは三束さんの記憶につまさきをそっと入れてゆく思いだった。

膵臓、という字を始めてまじまじと見つめた気がする。すごく難しい漢字だ。

3日前、父の健康診断の結果の紙に初登場した「膵嚢胞」の文字。

疑いがあるので要精密検査
という言葉にはまあ慣れているものの、
膵臓、という響きにはすごく怖いものを感じる。

まあ癌家系だからなあ、と諦めるには早すぎるが、想像は悪いほうに膨らむばかりである。

父の父、つまり祖父が癌で死んだのが50歳。
そして再来週、父は50歳になる。
悲しいことだが、運命的なものを感じずにはいられない。

「太く短く生きる」と豪語していた父も今回ばかりは縮み上がっている。

検査して正確な結果が出るには、少なくとも一ヶ月はかかるだろう。


もう少し元気でいてもらわないと困る。


鑑定士と顔のない依頼人

バイト先の人に強く薦められた(というか無理やり渡された)DVDで久々の映画鑑賞。

鑑定士と顔のない依頼人 [Blu-ray]

鑑定士と顔のない依頼人 [Blu-ray]


最後に絶対驚くであろう、見事なオチ。
よくよく考えればたくさん伏線が張られているので、2回見たくなると思う。
結末を知った上でもう一度観るとぜんぜん違った印象だろう。

鑑定士と顔のない依頼人

タイトルで損しているというか、もし薦められなければ絶対に見ようと思わなかった。
原題の「BEST OFFER」であれば、なるほど良いなと腑に落ちる感じ。


良い。
良作。

貸してくれた人に感謝。

学問


大人の階段登っていくのを見守っている感じ。

章が進むに連れて、成長していくんだけど、それでも、そこまでしかいかなかったか、、、という感じ。

テンちゃんとフトミのさらに10年後、20年後が見たかった。
ちゃんと心も体も大人になった彼らの話も読みたかった。
上下巻あると思っていたら1巻完結だったみたいな。



言葉遣いも彼らの年に合わせてあるので、非常に軽く、読みやすい。




学問 (新潮文庫)

学問 (新潮文庫)

カラフル


最初の設定をある程度掴んだ段階でオチが見えてきてしまったのは、物語のオチが甘いのか自分があれこれ予測しすぎなのか。


そりゃアニメにも実写にもなるわと思うようないい話なんだけど、いい話が必ずしも面白いとは限らない。


すぐ読み切れる短さだから良かったけど、長い時間がかかるボリュームでこのオチだったら絶対に読んだことを後悔していただろう。


要するに自分は、先が読めない話が好きだし、さらに言えばふわふわなファンタジーよりも人間臭いリアルな話が好きなんだろう。


中高生のうちに読んでたら良かったかも。

カラフル (文春文庫)

カラフル (文春文庫)